財界の囲碁愛好家 |
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財界人では、大倉喜七郎が囲碁殿堂入りしている。帝国ホテル創業者で1923年の日本棋院創設に尽力した人物。日本棋院は、総裁や理事長、理事に財界人の就任することが多い。創設時から財界の支援が欠かせなかったという事情からであろう。棋士以外を役員にしない純血主義の将棋会とは大違い。 ちなみに2014年時点では、総裁に今井敬・新日鐵住金㈱名誉会長、理事長に和田紀夫・NTT㈱特別顧問、副理事長に蛇川忠暉・日野自動車㈱特任顧問、7人いる常務理事の1人に真崎秀介・㈱情報通信総合研究所常務取締役、といった具合だ。 総裁の今井敬は新日鐵社長・会長を経て昭和生まれ初の経団連会長となった人物。東大では囲碁部部員だった。理事長を2期務めた大竹英雄の後継で就任したNTT社長・和田紀夫理事長は初段だそうだ＜京大囲碁部出身＞。 | ||||||||
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○ 女性経済人・広岡浅子
広岡浅子は、徳川の時代に生まれ、明治に活躍した実業家、教育者、社会運動家。豪気・英明な天性から「一代の女傑」と称えられた。 →広岡浅子 17歳で鴻池と並ぶ大坂の豪商であった加島屋の次男・広岡信五郎と結婚。20歳で明治維新の動乱を迎え、家運の傾いた加島屋を救うため実業界に身を投じ夫と共に加島屋の立て直しに奔走。明治17年頃から炭鉱事業に参画。筑豊の潤野炭鉱を買収、開発に着手。明治21年に加島銀行を設立。続いて大同生命創業に参画するなど、加島屋は近代的な金融企業として大阪の有力な財閥となる。 広岡浅子はまた我国初の女子大創設に尽力したことでも知られる。梅花女学校の校長であった成瀬仁蔵から著書『女子教育』を手渡され、大いに共感したことがきっかけであった。 彼女は囲碁を嗜んだ。連続テレビ小説『あさが来た』でも、主人公“あさ”が祖父とたびたび囲碁を打つシーンが登場した。その技量はプロの初段に五目前後というところで、女性としてはまず珍しい方であろう。強かった。 大隈重信伯には三目置いて打ち、打ち始めると夜の更けるのも知らぬ程。今のアマ段位で言うと、三、四段はあるという。 |
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● 関西電力・一本松珠機
関西電力常務から原電社長になった一本松珠機は、京大電気工学科で芦原と2年違いというライバル。その一本松はすこぶる囲碁が強かった。 ところで、日本棋院の瀬越憲作九段は名伯楽。昭和の棋聖と崇められる中国生まれの棋士・呉清源の棋譜をみて「棋聖・秀作の再来」と述べたとされる。瀬越は犬養毅や大倉喜七郎などの助力も受けて正式な招待状を送り、昭和3年になると準備のために弟子の橋本宇太郎四段を北京に派遣。呉清源はこの年14歳のときに母と兄と共に日本に渡り瀬越門下に。 |
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〇 新日鐵・今井敬社長
今井敬（いまい たかし、1929年12月23日 - ）は実業家。新日本製鐵（現・日本製鉄）相談役名誉会長、元社長。日本経済団体連合会名誉会長で、第9代経済団体連合会会長。財界の大物論客として知られる。 東大時代から囲碁を好み、囲碁部部員だった。2004年から日本棋院総裁を務めている＜第8代＞。 1946年に旧制第一高等学校入学。一高を経て、1952年3月東京大学法学部卒業後、富士製鐵（新日鉄の前身）に入社。財務担当の常務時代に固定費削減を訴え、高炉13基のうち5基を休止するなど徹底的な合理化を推進。1993年の社長就任以降、財界活動で当時株主重視の論陣を張る宮内義彦（オリックス社長）らと対立し、雇用を重視しつつ「創業的大リストラ」として3000億円のコスト削減を打ち出し、アジア通貨危機など鉄鋼需要の激減時にも経常黒字を維持する強固な経営体質を築いた。 | ||||||||
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● 東京電力・勝俣恒久会長
勝俣は福島第1原発事故時（2011年3月11日）の会長である。 電事連会長、日本原燃㈱会長、日本原子力発電取締役などを歴任。東電OL殺人事件では被害者女性の直属の上司であった。 趣味は囲碁で日本棋院の理事も務めた。関係者いわく「シャープかつ正攻法」。 政治家・小沢と囲碁仲間として親交が深いということも有名。財界関係者が明かす： 「六本木のANAホテルの37階に、高級会員制囲碁サロン「Ranca」がある。小沢さんと勝俣さんはここの囲碁仲間で、勝俣さんは『囲碁では小沢さんに負けないんだ』と嬉しそうに言っている。2009年の政権交代後、幹事長として鳩山政権を牛耳っていた小沢さんに会いたくても会えない財界人が多い中、勝俣さんは囲碁の縁を通じて小沢さんに食事会を持ちかけた。三井物産・上島重二元会長と新日鐵・今井敬名誉会長も加わって四人で数回会食したそうです」 | ||||||||
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○ 日本電気・関本忠弘
もう故人だが、NECで社長、会長を歴任。ソニー・盛田昭夫と並ぶ国際的知名度があった。社長に就任した1980年当時は電信電話公社（NTT）への依存度が高い「電電ファミリー」の中心的会社にすぎなかった。そこから脱却するため、情報通信事業に主軸を置く業態への変革を目指し、日本を代表するハイテク企業に育て上げた功労者である。特にパソコン事業のPC9800シリーズは50％を超えるシェアを獲得し、ガリバーと称された。 囲碁は実力七段。碁風はアグレッシブ。日本棋院のなかで、次の理事長は関本氏だと言われていた。他界してしまって実現しなかったが。 人気棋士と碁を打ち、そのあと酒食を共にするのが楽しみだった。NEC杯囲碁トーナメント、中国版棋戦NEC杯棋賽を創設。プロと打つときはだいたい黒を持って五子置く（ハンディをつける）のが普通だが、彼は対局となると相手がプロだということを忘れて、白を攻めまくった。ビジネスでも同じ。常に攻撃的だった。パソコンのシェア25％はトップシェアだったが彼としては不満だった。会議の席でも部下を叱咤。「なぜもっと売らないんだ」と大声。「囲碁と同じですよ」と秘書の話。常にアグレッシブな人だった。 全盛時、NECのパソコンのシェアは常にトップで一時ダントツの70%もあった。関本社長時代後半に、IBMはじめ、世界のパソコンメーカーが日本市場に登場したが、それでもシェア25％を切ったことはなかった。1998年には経団連会長候補ととして名前が挙がったものの、会長選挙で新日鐵・今井敬に敗れた。 | ||||||||
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● 任天堂・山内溥
これも故人。玩具メーカーの任天堂を電子ゲームによって世界的な企業に押し上げた中興の祖。インベーダーゲームが氾濫していた際に、家庭用テレビゲーム機も数多く手掛け、1980年には携帯型ゲーム機「ゲーム&ウオッチ」がベストセラーを記録。この直後、「アーケードゲームを家庭で」という目的に据え置き型ゲーム機「ファミリーコンピュータ」を開発した。 1992年、米国大リーグ球団シアトル・マリナーズが経営危機に瀕しシアトルから移転することを考えていたが、「長い間米国任天堂を置かせてくれたシアトルへの恩返し」として大リーグ球団をシアトルに留めるために、山内がポケットマネーでマリナーズ運営会社の株式を購入。山内の株保有率は49％に抑えられたもののマリナーズの筆頭オーナーとなり、大リーグ史上初の非白人オーナーとなった。 日本人大リーガー・佐々木主浩やイチローが、任天堂のコマーシャルに登場したこともある。 イチローが大リーグへ挑戦を表明した時には、「何が何でも獲れ」 と厳命を下したという。 山内はゲーム会社の社長だったのにゲームをほとんどやらなかった。唯一手を出したゲームが囲碁。趣味の囲碁はアマ六段の腕前を持つ。名目上は六段であるが、実際はもっと強いのではないかといわれている。2005年9月30日には、囲碁界への貢献が認められ、5年間空席だった日本棋院関西総本部長に就任している。 「任天堂が囲碁ゲームを出す際は、ソフト（思考ルーチン）が山内と勝負し、それに勝たなければならない」 という暗黙のルールがあり、任天堂は2008年8月5日配信開始の Wiiウェア『通信対局 囲碁道場2700問』 まで一度も囲碁ゲームを発売できなかった。任天堂に技術がないわけではなく、囲碁対局ソフトの能力がまだまだだから。先述のゲームについても、コンピュータとの対局は初心者用の練習対局に限られている。 | ||||||||
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○ ㈱きっずファイブ・政光順二
京大を卒業して島津製作所に入社。ソフト制作技術者として腕を振るう。40代以降はむしろ社外での活躍が目立ち、
インターネット囲碁分野で知る人ぞ知る存在になった。きっかけは小学生の長女との碁。手ほどきしながらネットで情報交換を始めたのが転機になったという。 在社中の1988年に“棋譜管理ソフト”を開発してネットで公開。1999年にはソフトコンテストで大賞を受賞。2001年には囲碁を通じて子供の能力開発を図る 「囲碁きっず」 をネット上に開設。そして02年4月に島津を退社。知人と 「㈱きっずファイブ」 を設立する一方、関西棋院と共同でネット対局道場 「関棋ネット」 の運営にも乗り出した。一般およびプロ棋士対局、アマとプロによるチャット、音声による指導碁などのサービス機能も整いつつある。さらに韓国囲碁界との共同事業も計画。「ポケット碁盤」の開発者。 | ||||||||
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● ㈱ケンコーポレーション・田中健介
早稲田大学第一政経学部を卒業後、株式会社マルマンに入社。その後、外国人向け賃貸仲介の不動産会社に勤務。1972年に外国人向け高級賃貸住宅の仲介会社 「㈱ケン・コーポレーション」 を設立し代表取締役社長。東京に赴任している欧米のエグゼクティブの65％以上が同社の仲介したマンションに居る。バブルの時にまったくバブルに乗らなかった唯一といっていいほどの不動産業者。 田中は言う： 学生時代は囲碁部で寝食忘れて囲碁に取り組んだ。運不運が左右する麻雀などの賭け事も好きではない。それに対して囲碁というのは論理学、危機管理学、分析学、先見学を駆使する理論的、戦略的なゲーム。だから囲碁は性に合っているので極めようと思い打ち込んだのです。無敵の状態になろうと努力するうちに囲碁的な考え、つまり必勝哲学が身に付きにきました。事業として外国人に英語を使って不動産を仲介して管理する、また新しいものをオーナーにつくらせる。この分野は資本の論理などではできない分野だ、これなら勝てると思いました。分析してみるとディベロッパーの不動産業はつくってもつくっても売れ残りで利益がなくなる壮大な自転車操業になっている。だから本格的に不動産業を営むならオーナーでなくてはいかんと思い、今ビルを買ったりホテルを買ったりしています。 | ||||||||
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○ センコー㈱・福田泰久
福田泰久代表取締役社長はアマ四段。2016年春に創業100周年を記念して、新棋戦『扇興杯女流最強戦』を創設した。優勝賞金800万円と女流棋戦最高額だ。
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● ㈱グロービス・堀義人
堀義人代表取締役社長はアマ初段。2014年にグロービス杯世界囲碁U-20を創設した。優勝賞金300万円。 また、5人の子持ちだが、子育てに囲碁を重視。その結果、上の3人は アマ最強三兄弟として有名。長男は小学校時にすでに四段。 さらに『知のトライアスロン』を提唱して、囲碁・将棋・オセロの三種競技会を実現している。 |
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○ 碁席「秀策」・桑原青人
東京西武新宿駅前の、正面の細長いビルの6階にある碁会所は30年の歴史を持つ。顧問は、故・
藤沢秀行九段。秀行九段が桑原さんに「アマだって、とことん囲碁を研究する場所が必要だ」と、24時間営業の碁会所の必要を説いたという。こうして “碁席秀策” の開店となった。店内には藤沢秀行九段の大きな書がかかっている。60歳の時の書で「膝錐之志（しっすいのこころざし）」。眠くなると膝に錐をたて、さらに学べという修業の心得である。
桑原は、大学在学中に“競輪”が縁で藤沢秀行と知り合った。大学卒業後、いろいろな職業をこなし、将棋のプロ棋士・囲碁のプロ棋士との面識が多い。今までに、“秀作”に来店したプロ棋士は、150名を超える。 碁席の切り盛りは、桑原（アマ八段）の長女・恭子さん（三段格）。小学生の頃から、藤沢九段をよく知っていた。「父がよく、秀行先生を、自宅にお連れしていました。そう、いつも酔っ払っていましたね。家の近くに“銭湯”（中目黒）があって、先生は、私をよくお風呂に連れて行ってくれました」 「うちは居酒屋です」と恭子さんが言うように、入って左側のカウンターは、まったく居酒屋。メニューも豊富で、人気は牛筋煮込み、さんま定食、ラーメン。24時間営業で深夜でも碁を打てる。東日本大震災のときは、自宅に帰れない人で“秀策”は満席状態だった。 | ||||||||
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